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日本の旅館4選

2018.11.22

日本の旅館4選
日本を旅するとき、どこに泊まるべきでしょうか。ホテルやゲストハウスも良いですが、やはり日本の伝統的な「旅館」はおすすめです。伝統的な建築や装飾に彩られた館内や部屋、地元の旬の食材を生かした料理、大地の恵である温泉、そしておもてなしの心など、「日本の文化」を一度に体験できるからです。日本の旅館は初めてという方のために、旅館のあらまし、歴史、マナー、おすすめの旅館などをご紹介します。

旅館とは?

旅館とは?
そもそも日本の旅館とは何でしょうか? わかりやすく西洋風のホテルと比べてみましょう。旅館とホテルの大きな違いは「ゲストとの距離感」です。ホテルは、ドアひとつ隔てれば、室内は完全なプライベート空間です。スタッフといえども、ゲストの許しがなければ勝手に足を踏み入れることはできません。 接客についても、ゲストから何かを頼まない限り、スタッフの方から積極的に立ち入ってくることはありません。プライバシーがしっかりと確保された上で快適に過ごせる、それがホテルです。

一方の旅館は、部屋の中まで荷物を運んでくれたり、お茶を入れてくれたり、食事をしている間に布団を敷いてくれたりと、ゲストとの距離感が非常に近いのが特徴です。 慣れていないと戸惑ってしまうかもしれませんが、これは“お客様を家族のように大切にしたい”という、日本の伝統的なおもてなし精神の現れなのです。その代わり、きめ細かい接客が期待できます。

旅館とは?2
そして畳が敷かれた「和室」が部屋の大半を占めるのも旅館ならでは。和室の場合、ベッドは部屋にはなく、前述のように就寝前(多くの場合は夕食の後)に旅館のスタッフがふとんを敷きにやってきます。

さらに「大浴場」があるのもホテルとの大きな違い。これは旅館には、温泉での療養を目的とした「湯治場宿」の伝統が受け継がれているからです。また日本では、風呂によってもてなすという文化が昔からあります。

旅館とは?3

旅館の歴史

旅館の歴史
日本の「旅館」はいつから始まったのでしょうか? 旅人を宿泊させるための「宿」は12世紀から発展してきたといわれています。江戸時代(1603年~1868年)には、全国に張り巡らされた街道を利用した旅文化が庶民の間にも広がり、泊まる人の身分や目的に応じて様々なスタイルの宿が生まれました。

例えば、大名など位の高い武士を泊める宿は「本陣(ほんじん)」といいました。豪華な門や玄関などを備えていましたが、食事の提供や接客などはしなかったそうです。つまり泊まる場所だけを提供しました。下級武士や庶民が泊まる宿は「旅籠(はたご)」と呼ばれました。こちらは施設こそ豪華ではありませんでしたが、一泊二食を提供しており、それが旅の楽しみの一つとなっていたそうです。温泉地には療養を目的とした「湯治場宿」があり、そこでは飲食は提供されず、自炊をして長期滞在するというのが基本的なスタイルでした。

このように様々に別れていた宿のスタイルが、明治維新で身分の区別や幕府の規制が無くなり、一つに集約されていきました。さらに「茶屋」や「料亭」の飲食による「もてなし」も加わり、現在の「旅館」の形にたどり着いたと言われています。つまり今の日本の旅館は、日本の宿文化が凝縮し、進化したものなのです。

「仲居」と「女将」の存在

「仲居」と「女将」の存在
旅館においては、「仲居(なかい)」と「女将(おかみ)」という女性スタッフが接客の中心を担っています。身の回りのことを細々とやってくれるのが「仲居」さんです(日本では役職名にも礼儀として敬称の“さん”をつけます)。一組のゲストに対して担当する仲居さんが一人決まっていて、そのゲストが帰るまで責任を持ってもてなします。困ったことやリクエストがあれば、担当の “仲居さん”に伝えてください。

仲居さんたちを統括し、宿全体の接客サービスを取り仕切っているのが「女将」さんです。個人経営の旅館なら、宿主の配偶者がその任にあたるのが一般的です。各旅館のもてなしの良し悪しは、この女将の力量にかかっていると言って過言ではありません。仲居さんのサービスが良い、旅館の居心地が良いと感じたら、それは女将さんのおかげかもしれません。

「仲居」と「女将」の存在2
旅館に泊まったら、どんな人が女将さんなんだろう?と、ちょっと気にしてみてください。

旅館のマナー

旅館のマナー
旅館には、ホテルとは違った独特のマナーがあります。知らなくても叱られることはありませんが、知っておいて損はありません。

まずは予約。基本的に食事抜きの素泊まりは控えましょう。美味しい食事も旅館の大切なもてなしの一つなのですから、それを味わわないのは旅館に泊まる楽しみが半減します。最近は“素泊まり可”の宿も増えていますが、ぜひ旅館の食事を味わってみてください。

基本的に飲食物の持ち込みは不可です。ただし食事の後に部屋で楽しむ程度のアルコールやおつまみは持ち込むのは構わないという宿もあります。予約の時に確認してみるといいでしょう。そうした宿では、ワイングラスやワインオープナーなどを貸し出してくれる場合があります。

日本の伝統建築の老舗旅館では、玄関で靴を脱ぐ場合があります。その際、靴は脱ぎっぱなしで構いません。仲居さんや「下足番」という専門スタッフが、 靴箱にしまってくれます。

部屋に案内されると、仲居さんが備え付けの急須でお茶を入れてくれます。いわゆるウェルカムドリンクです。机の上にあるお菓子はその時に食べて構いません。地元の有名なお菓子であることが多く、大体は旅館の売店で販売していますので、気に入ったらお土産として買って帰るのもいいでしょう。

旅館のマナー2
クローゼットの中には、人数分の浴衣が用意されています。 旅館では、廊下や食事処など共有スペースでも基本的に浴衣はOKです。着方は仲居さんに聞けば喜んで教えてくれますよ。

旅館のマナー3
布団は自分で敷かなくても大丈夫です。夕食や入浴している間に係の人が敷いてくれます。朝もそのままで結構です。朝食の間などに片付けてくれます。ただし、チェックアウトぎりぎりまでゆっくり寝ていたいという場合は、片付けないよう伝えてください。

荷物の置き場所は間違いやすいので注意が必要です。和風旅館の場合、部屋の壁ぞいに「床の間」というスペースがありますが、これは物置ではなく、掛け軸や生け花などの装飾品を置くスペースです。荷物は部屋の隅か、洗面台などがある板の間に置いておきましょう。特にキャスター付きのトランクは、引きずって畳を傷めないように特に気をつけてください。 ちなみに濡れたタオルなども、畳や襖などを濡らしてしまうので、専用のタオルかけにかけておくのがマナーです。

旅館のマナー4
チップは日本の旅館では宿泊料金の中に含まれるので必ずしも払う必要はありません。ですが何か特別なお願いをしたい場合や、トラブルで迷惑をかけてしまった時などに、「感謝の気持ち」として「心付け」というチップに相当するものを渡すことがあります。

最近は外国からの観光客の間でもだいぶ認識されてきたようですが、大浴場では着ている服を全て脱いで入ります。そして湯船に入る前には必ず体を洗うか、お湯で汗や体の汚れを流してから入りましょう(これを「かけ湯」と言います)。手ぬぐいは湯に沈めないのがエチケットです。
より温泉を楽しむための「温泉マナー講座」

旅館のお風呂は、単に体を洗うだけでなく、湯けむり漂う独特の情緒を味わう場所でもあるので、大きな声で喋ったり走り回ったりすることは控えてください。どうしても他人と同じ風呂に入るのが憚られるのであれば、部屋にある「内風呂」を利用するのが良いでしょう。

日本の誇る旅館4選

日本全国には無数の旅館があります。それぞれに良さがありますが、今回は編集部が選んだ、いかにも日本旅館らしい伝統のある名旅館を4つご紹介します。

「加賀屋」(石川県・和倉温泉)

明治39年(1906年)創業。第41回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」において36年連続総合第1位に輝くなど、名実ともに日本一の名旅館です。

「加賀屋」(石川県・和倉温泉)
ゲストに対して「ノー」と言わない接客は有名です。ゲスト一人一人に合わせたきめ細かな気配りをぜひ体験してみてください。ちなみに、女将の部屋への挨拶回りは、こちらの加賀屋さんから始まったと言われています。

「加賀屋」(石川県・和倉温泉) 2
日本の伝統美を凝縮した和室は、まさに日本の旅館の設え。日本海に面しているので、海に沈む夕日を部屋や大浴場から楽しむことができます。

「加賀屋」(石川県・和倉温泉) 3
日本海の海の幸をふんだんに使った食事も楽しみです。

全長80メートル、1,000坪のエンターテイメントゾーン「錦大路」では、縁日の屋台のようにたくさんのショップが並び、連日華麗なショーや演芸が催されています。

「加賀屋」(石川県・和倉温泉) 4
泊まるだけで日本のもてなしを満喫できること請け合いの宿です。

●石川県七尾市和倉町ヨ部80番地
●0767-62-1111
●料金3万1470円~(一泊二食付・2名1部屋利用・税サ込)
https://www.kagaya.co.jp/index.php
*外国語スタッフ:英語・中国語
*外国語表示・メニュー:英語・中国語
*食事:アレルギーや宗教上不可な食材は変更可。ハラールは不可。

「水明館」(岐阜県・下呂温泉)

草津、有馬とならぶ日本三名泉の一つ下呂温泉に、昭和7年(1932年)創業した老舗旅館です。飛騨川のほとりにある温泉旅館なので“水に明けゆく湯の煙”というのが宿名の由来です。

風呂は、ヒノキ・野天・展望と、日本の温泉旅館の大浴場の特徴を全て兼ね備えています。部屋風呂も一部温泉です。貸切風呂もあるので、大浴場が苦手な人でも安心ですね。

「水明館」(岐阜県・下呂温泉)
食事は伝統的な和食のほか、欧風・中華も用意されています。名物の飛騨牛を使った会席料理を提供する「料理茶屋北乃寮」には囲炉裏席もあります。

「水明館」(岐阜県・下呂温泉)2
茶室や能舞台、日本庭園を完備。館内の所々には日本を代表する芸術家の作品が展示されています。

「水明館」(岐阜県・下呂温泉)3
部屋は純和風だけでなく、和洋室・洋室まで幅広く用意しています。日本の伝統に慣れていない人でも安心して日本文化を味わえる、そんな懐の広い旅館です。

●岐阜県下呂市幸田1268
●0576-25-2800
●料金:1万7820円~(一泊二食付・2名1部屋利用・税サ込)
https://www.suimeikan.co.jp
*外国語スタッフ:中国語・韓国語・スペイン語・英語
*外国語表示・メニュー:基本的に英語
*食事:食材の変更、ベジタリアンメニュー対応可。ハラールは不可。

「落合楼村上」(静岡県・伊豆天城湯ヶ島温泉)

創業は明治7年(1874年)。田山花袋や川端康成など、日本を代表する文豪が多数泊まった老舗旅館です。

「落合楼村上」(静岡県・伊豆天城湯ヶ島温泉)
風情あふれる建物は昭和8年(1933年)の築。なんと9割が国の登録有形文化財です。もはや〝泊まれる博物館"。これぞ日本の伝統美という空間で、ひと時を過ごすことができます。

「落合楼村上」(静岡県・伊豆天城湯ヶ島温泉)2
「落合楼村上」(静岡県・伊豆天城湯ヶ島温泉)3
風呂は「天狗の湯」「レトロモダンタイル風呂」「貸切大露天風呂」の3つ。貸切大露天風呂は開放感抜群です。

「落合楼村上」(静岡県・伊豆天城湯ヶ島温泉)4
夕食は伊豆の食材をふんだんに使った会席料理。金目鯛などの海の幸だけでなく、ワサビやシイタケなど山の幸も豊富です。静岡の地酒の飲み比べも人気です。

「落合楼村上」(静岡県・伊豆天城湯ヶ島温泉)5
朝食後には宿主自ら案内する館内ツアーを実施。宿泊者は無料なのでぜひ参加してみてください。

●静岡県伊豆市湯ヶ島1887-1
●0558-85-0014
●料金:2万7000円~(一泊二食付・2名1部屋利用・税サ込)
https://www.ochiairo.co.jp/
*外国語スタッフ:英語・中国
*外国語表記・メニュー:英語
*食事:ベジタリアン等可能な限り対応。ハラール不可。

「島崎藤村の宿 中棚荘」(長野県・信州小諸)

明治31年(1898年)創業。「破壊」「夜明け前」などの作品で知られる自然主義文学作家・島崎藤村と縁があり、作品の中にも登場する由緒ある宿です。

「島崎藤村の宿 中棚荘」(長野県・信州小諸)
現当主で5代目。明治31年(1898年)築の大正館、平成5年(1993年)築の平成館からなります。外国人旅行者には、“日本の伝統的な建築様式を体感できる”と、大正館が人気だそうです。

食事は、地元小諸のワインと、それに合う和風のフルコースを堪能できます。平成30年(2018年)10月には自社ワイナリーの「ジオヒルズワイナリー」オープン。そちらで醸造したワインも楽しみです。また、古民家を移築して作った離れの食事処「はりこし亭」で、創作会席料理を楽しむこともできます。

「島崎藤村の宿 中棚荘」(長野県・信州小諸)2
お風呂は湯船のすぐ隣に畳の脱衣所があるユニークなスタイルです。信州の山々を一望できる露天風呂もあります。10月から5月までは信州産リンゴを湯に浮かべた「りんご風呂」が名物です。

「島崎藤村の宿 中棚荘」(長野県・信州小諸)3

●長野県小諸市古城中棚
●0267-22-1511
●料金:1万950円~(一泊二食付・2名1部屋利用・税サ込)
https://nakadanasou.com
*外国語スタッフ:英語
*外国語表記・メニュー:英語
*食事:ベジタリアン等対応可。ハラールは不可。

旅館のまとめ

いかがでしたでしょうか? 日本の旅館に泊まってみたくなったのではないでしょうか? 旅館に泊まるということは、日本の文化を体験するということ、そのものです。あちらこちらに観光に出歩くのもいいですが、ぜひ一度、ゆっくりと日本の旅館で過ごしてみてください。日本の良さがもっとわかると思いますよ。最後に、日本の旅館は「朝」も楽しみ。贅沢な朝ごはん、朝風呂、そして朝寝……これぞ旅館の醍醐味です。さあ、日本の旅館へ、いらっしゃい!

※2018年8月27日現在の情報です。詳細は直接お問い合わせの上おでかけ下さい。

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