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フグってどんな魚?

2018.11.02

フグってどんな魚?
数ある魚の中でも、日本人にとっては特別な存在感があるフグ。お刺身や鍋、揚げ物など、食べ方は他の多くの魚と変わらないのに、食べに行く時には「魚を食べに行く」ではなく、「フグを食べに行く」と表現されるのも特徴的です。高級魚として知られ、接待や特別な会合など、フグを食べること自体に敷居の高さや、非日常的なイメージがあるからかもしれません。フグの本場として知られる山口県下関周辺では、「フグ」ではなく「フク」という呼び方をするそう。幸福の「福」にかけてPRされるなど、ハレの日の食材として、昔から特別な魚と位置付けられてきました。

このように日本では珍重されるフグですが、体内に毒を持っていることから、フグを食べることに驚かれる国々も多いようです。日本でも、「フグは食いたし命は惜しし」と昔から謳われてきたように、美味しさと併せ持った猛毒のために、豊臣秀吉が「河豚(フグ)禁止令」を出して以来、江戸時代(1603年-1868年)を経て明治21年(1888年)になるまで一般的には食することが禁じられ、大変厳しい取り締まりが行われていました。

そのフグが下関の地で解禁されて今年で130年。高級なイメージはそのままに、フグは今までよりもリーズナブルな値段で味わえる、より身近な存在となりました。コラーゲンを多く含み、低カロリーかつ高たんぱくであることから、健康面でも密かに注目を集めています。 日本ではどのように安全に提供され、人々を魅了してきたのでしょうか。一般的にはまだまだ知られていない、フグの魅力について紹介しましょう。

フグとは?どんな種類がある

フグとは?どんな種類がある
美食芸術家として知られる北大路魯山人(*1)が、「日本の食品の中で一番美味しいもの」として挙げたフグ。古来より美食家を唸らせてきたフグとは、どんな魚なのでしょう。フグの旬は冬と言われますが、養殖技術の進歩から現在は市場に一年中流通するようになり、以前よりも身近な存在になってきました。フグで思い浮かぶのは、美しく盛られたフグ刺しの「トラフグ」。ですが、実は世界には約100種類のフグがいると言われており、水族館でおなじみのマンボウやカワハギもフグの仲間。日本近海には50種類ほど棲息していて、そのうち22種類が日本では食用として許可されています。

(1*)北大路魯山人:明治から昭和にかけて活動した芸術家。篆刻、彫刻、書道、画、漆芸、料理など、その活動は多岐にわたる。


しかしフグは「テトロドトキシン」という毒を体内に含んでいるため、水揚げ場所や部位によって食することができるか否かがさらに限定されてきます。フグは身(筋肉)、皮、白子(精巣)の3つの部位を食べますが、飲食店ではおもに、トラフグ(国産天然、国産養殖)、マフグ(国産天然)、ゴマフグ(国産天然)、ショウサイフグ(国産天然)、ヒガンフグ(国産天然)などが使用されています(種類は地域により異なる場合があります)。

トラフグの天然モノは、「フグの王様」と呼ばれるほどの最高級品として知られています。マフグはトラフグに比べ身が柔らかく、「フグの女王」としてトラフグに次ぐ人気を集めています。山口県萩市では「萩の真ふぐ」としてブランド化されており、値段がトラフグよりも格段に安いことから、今後さらに注目される存在になりそうです。ヒガンフグは春の彼岸頃(3月半ば~後半)によく獲れるのでこの名がついています。ゴマフグは島根から日本海北部でよく漁獲されていて、ショウサイフグは関東では鍋などで食されてきました。

フグを食べても大丈夫?

フグを食べても大丈夫?
フグは他の魚と違い、内臓、皮膚、血液、筋肉などに「テトロドトキシン」という猛毒を持っています。このために「あたったら死ぬ=鉄砲(てっぽう)」という意味から、「てっぽうのお刺身」を省略して「てっさ」と呼ばれるようになりました(フグの鍋「てっちり」は「てっぽうのちり鍋」の略)。そんな猛毒を持つフグですから、誰でも調理できるわけではありません。このために前出のように食用できるフグの種類や部位などが決まっており、かつ、特別な資格がないと調理をして提供することはできません。

フグの扱いに統一の国家資格はありませんが、「ふぐ条例」に基づき、都道府県知事が行うふぐ調理師試験において免許を取得した「ふぐ調理師」のみが調理(除毒)を行うことができます。どのような試験を経て免許を取得できるか、東京都の場合を参考に見てみましょう。

「ふぐ調理師」の受験資格は、まず調理師免許を持っていること、ふぐ調理師の資格を持つ者の元で2年以上フグの取扱に従事していることが条件です。試験は学科試験と実技試験があり、フグの種類の識別や、食べられる部位と食べられない部位の区別、有毒部を除去した上での調理まで行われます。ただ単に猛毒部分を除去するだけではなく、フグそのものを知り尽くしていないと合格できそうにない課題です。このふぐ調理師免許の取得方法は都道府県によって異なりますが、このような取り組みで、フグ解禁130年の歴史があるのです。

フグはどんな味がするの?

フグは、身(筋肉)、皮、白子(精巣)の3つの部位が食べられます。
それぞれの飲食店で創作料理はありますが、ここでは伝統的な食べ方を中心にご紹介します。

●身は、
・薄造りで刺身
・天ぷらや唐揚げ
・炙る
・鍋では締めにごはんを入れて雑炊まで
という食べ方で味わいます。

フグ料理の中でも象徴的なのは、大皿の上に花びらのように盛られた「フグ刺身」でしょう。「菊盛り」や「牡丹盛り」のように花びらに見立てたものが伝統的で、お皿の模様が透き通るほど身を薄くひき、芸術的に盛り付けます。食べる時は、上品にひと切れずつではなく、2~3切れを箸でまとめて掴んで味わうのがおすすめです。フグ自体は非常に淡白、かつ歯ごたえのある魚なので、薬味(ポン酢、もみじおろし、ネギ、塩など)と一緒によく噛んで食べることで、旨味成分を感じて、その余韻まで楽しむことができるのです。
北大路魯山人は、日本の食品の中で一番美味しいものとしてフグを挙げていますが、「味がわからないところに無量の魅力が潜んでいる」という趣旨の表現をしているほどです。「フグは高いのに淡白だから」と敬遠する人もいるようですが、2、3切れまとめてポン酢にくぐらせ、ゆっくりと味わってみて、その旨味と奥深さを実感してみてください。

天ぷらや唐揚げでは、小骨がないので食べやすく、白身魚特有のふっくらとした食感が楽しめます。身そのものを薄味にして調理することで、フグの味わいが感じられます。

フグのコースで最後に登場する鍋には、アラも入ることで出汁の旨味が倍増します。骨の周りでほぐれかけた、ぷるんとした身までしっかりと味わい、身やアラから溶け出した旨みの最後の一滴まで、雑炊に染み込ませて楽しみましょう。

●皮は湯引きにしてから細切りにします。こちらもポン酢と合わせることが多いですが、皮は低カロリーなうえ海洋性コラーゲンを豊富に含んでいることから、アンチエイジングなどの美容面でも注目されています。コリコリとした食感を楽しむことができます。

フグはどんな味がするの?
●白子は、濃厚でとろけるような舌触りが特徴です。刺身、炭焼、鍋で煮込んでいただきます。

フグはどんな味がするの?2
●食べられる部位は3つですが、日本酒好きにはもう1つ、忘れてはならない楽しみ方があります。「ヒレ酒」です。熱燗に加え、最近では冷たいヒレ酒も人気。熱燗の場合は干したトラフグのヒレを飴色に炙り焼いて、そこへ熱燗(温めた日本酒)を注ぎます。旨味成分が溶け出し、独特の風味がお酒に移ります。フグ料理とともにちびちびと飲むのがオススメ。

フグはどんな味がするの?3

フグはいくらで食べられる?一皿いくらぐらいするの?

高級魚のイメージが強いフグ。思い切り楽しみたい。けれど値段も気になるところです。お刺身、唐揚げ、鍋などの調理法、使われるフグの種類、天然か養殖か、またお店の立地などによっても異なります。お店により「白子は時価」といった場合もありますが、以下(全て一人前)の価格がある程度の目安になると思います(一人前の分量はお店ごとに異なり、値段も変わってくる場合があります)。
・お刺身(養殖)1,500円ぐらい
・ちり鍋2,500円ぐらい
・唐揚げ1,500円ぐらい
・白子2,000円ぐらい
すべて食べるとそれなりの金額になりますが(お酒も一緒に味わいたいですし)、天ぷらや唐揚げなど、ランチメニューで比較的リーズナブルにいただける単品メニューを用意しているお店もあります。

フグを食べられるお店はここ

猛毒を持って生まれたフグですが、安全性への取り組みもわかったところで、やはりその「魔性の美味しさ」を堪能してみたいものですね。


フォトジェニックなフグの刺身が見事
「銀座ふく太郎」

フグ料理の宅配のパイオニアである北九州の「ふく太郎」が、アンテナショップとして2012年に銀座にオープン。北九州から直送するこだわりのフグを年間を通して味わうことができます。ここでぜひ体験してほしいのが、フォトジェニックなフグの刺身。迫力満点の「龍盛り」、優雅に飛ぶ「鶴盛り」、しっとりとした風情の「富士山盛り」など、箸をつけるのをためらうほど芸術的で、お祝いの席にもぴったり。天然とらふぐコース2種類(二人前50,000円、二人前40,000円)、養殖とらふぐコース2種類(一人前13,000円、10,000円)のほか、天然と養殖2種の刺身を食べ比べできる楽しいコースもあります。ランチでは、いろいろなフグの味を少しずつ楽しめる3,900円のコース料理を提供。アラカルトでもコラーゲンがたっぷり入った紅白のとらふぐしゅうまいや、とらふく飯など、このお店でしか味わえないメニューが揃っています。

フグを食べられるお店はここ
とらふぐの刺身を鶴盛りにした、殿様姫様とらふぐコース。青空に舞う姿がなんとも優美。添えられた白子のソースとともに味わって。とらふぐ漬け、ふぐ燻製、とらふぐ皮、とらふぐ刺身鶴盛り、ふぐ炙り、焼とらふぐ白子、とらふぐ紅白しゅうまい、とらふぐから揚げ、とらふぐ鍋(またはしゃぶしゃぶ)、雑炊(またはとらふぐうどん)、漬物、甘味で一人前13,000円(税別)。一人前から注文可。当日2時間前までに予約(写真は一人前)。

フグを食べられるお店はここ2
フグを食べられるお店はここ3
和モダンの落ち着く店内。通常は社用などの理由から男性客の利用が多いフグですが、こちらは女性客の利用が多いそう。

「銀座ふく太郎」
●東京都中央区銀座5-5-8 西五番街坂口ビルB1F
●03−6228−5729
●12:00-15:00 / 17:00-22:00
●日曜・祝日休み
●東京メトロ銀座駅より徒歩3分


築地市場のすぐそば。アラカルトメニューも豊富
「つきじ天竹(てんたけ)」

東京の台所として賑わってきた築地市場と、隅田川にかかる勝どき橋の目の前にあるお店。初代が天ぷらのお店として明治時代(1868年-1912年)に開業したのがはじまり。高級食材であるフグを少しでも手頃に提供したい、とご主人の浜田さんは味はもちろん、鍋などのボリュームにもこだわっています。トラふぐ刺し身等おなじみの品々のほか、ふぐつくね焼きやふぐ寿司など見ているだけで食べてみたくなるアラカルトメニューが豊富。夏季ならふぐのナゲットも。外国人には、アラカルトならふぐ刺しや唐揚げ、コース料理では築地コースが人気で、特に唐揚げはぜひ食べてほしいオススメの一品だそう。ランチタイムにはふぐ天丼もありますが、ふぐコースもオーダーできます。客席は1~5階まであり、テーブル席や座敷のほか、和室、洋室の個室もあり、人数や目的に合わせて選べるのが便利です。

フグを食べられるお店はここ4菊盛りに美しく並べられたトラふぐ刺身。一人前3,900円(税別)。(写真は三人前)

フグを食べられるお店はここ5ふっくら、さくっと揚がったふぐ天ぷら1,600円(税別)

フグを食べられるお店はここ6築地コースは、ふぐ酢の物、トラふぐ刺身、ふぐサラダ、ふぐちり、雑炊セット。一人前6,190円(税別)。二人前より注文可(写真は二人前)

フグを食べられるお店はここ7ボリュームも多い天竹コースは、お通し(3品)、ふぐ皮刺身、トラふぐ刺身、ふぐから揚げ、トラふぐちり、雑炊セット、デザート。一人前12,857円(税別)。一人前より注文可(写真は一人前)

「つきじ天竹」
●中央区築地6−16−6
●03-3543−3000
●3月1日~10月末日までは日曜休み。他にGW、夏季休暇あり。
 11:30-14:30(L.O.13:30)/ 16:30-22:00(L.O.21:30)
●11月~2月末日 休みなし(12月31日~1月4日を除く)
11:30~22:00(L.O.21:30)
●個室は4名~、1名12,000円の料理(税別)より予約可
●東京メトロ日比谷線 築地駅より徒歩7分、または都営地下鉄大江戸線 勝どき駅より徒歩10分


ふっくら、プリプリ、香ばしい「焼フグ」
「中目黒 夢鉄砲(なかめぐろ ゆめでっぽう)」

従来のフグ料理のイメージを覆す食べ方が、夢鉄砲が考案する「焼ふぐ」。フグをまるで焼肉のように網の上で焼いていただきます。生でも食べられる新鮮なトラフグは、さっと炙ることでふっくら香ばしくプリプリの食感に。味付けは塩、ニンニク、タレ、ケジャンの4種を用意(そのうち好みで3種を選択)。夢鉄砲発祥のこのスタイルは、29年前に大阪で登場して以来大人気に。大阪、金沢に次ぐ5軒目として、ついに昨年、東京に中目黒店がオープンしました。コースメニューやアラカルトは基本的に全店同じですが、中目黒店では、専属ソムリエがフグ料理に合うワインをセレクト。「フグ料理とイタリアワイン」のペアリングを楽しむことができます。

フグを食べられるお店はここ8焼ふぐ。上身3,700円(税別)。人気の逸品料理もあわせて楽しめるコース料理でいただくのがお得でおすすめ

フグを食べられるお店はここ9中目黒店限定の人気の夢コース。先付け、ふぐぶつ、ふぐのひれスープ、焼ふぐ(上身、とうとう身)、サラダ(お替わり自由)、ふぐ唐揚げ、ふぐ茶漬け、デザート。一人前9,800円(税別)。一人前より注文可(写真は二人前)

フグを食べられるお店はここ10ぶつ切りにした生の上身をおろしポン酢と一緒に白菜に包んで食べる、ふぐぶつ。さっぱり、シャキッとした白菜と一緒にほおばった時の味わいと食感が新鮮

フグを食べられるお店はここ11隠れ家的な雰囲気の中目黒店。スタイリッシュな店内には、テーブル席、カウンター席、個室が揃っています

フグを食べられるお店はここ12気兼ねせずくつろげるソファー席がうれしい中目黒店の個室。デートにもいいですね

フグを食べられるお店はここ13中目黒店 カウンター席。座席にこだわり、ゆったりくつろげる座り心地です

「中目黒 夢鉄砲」
●東京都目黒区青葉台1−25-13 グランデュオ中目黒B1F
●03-5725-0229 
●17:30-24:00(L.O.22:30)
●日曜・祝日休み
●東京メトロ日比谷線・東急中目黒駅より徒歩8分

「焼ふぐ 夢鉄砲 上本町本店」
●大阪府大阪市天王寺区小橋町12-15 エバーグリーン上本町1F
●06-6767-3301 
●17:00-24:00(L.O.22:30)
●不定休
●近鉄大阪線大阪上本町駅から7分 / 大阪環状線鶴橋駅から7分

「焼ふぐ 夢鉄砲 北新地店」
●大阪府大阪市北区堂島1-4-7 堂浜アネックスビル1F
●17:30-23:30 (L.O.22:00)
●日曜・祝日休み
●JR東西線北新地駅から5分

フグのまとめ

高級で手が届かない、はたまた毒があって危険などと思われがちなフグ。そのイメージは変わったでしょうか?
フグの解禁地である山口県下関市には、日本で唯一のフグ専門の市場である「南風泊(はえどまり)市場」があり、フグ取扱量日本一を誇ります。毎年9月のフグシーズンが始まると、全国各地から集められたフグのセリの様子がニュースでも報じられるほど。今年もフグのシーズンがやってきました。一年中味わえる存在になったフグですが、旬と言われる時期ならではの旨味を堪能してみてはいかがでしょうか。

(フグについて取材協力:国際ふぐ協会)

※2018年9月3日現在の情報です。詳細は直接お問い合わせの上おでかけ下さい。

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