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2018.10.17

箸
毎日、何気なく使っている
もっとも身近にある漆器として、日本の食生活に欠かすことができない存在です。東アジアの国々では広く使われており、2本で1組という点では同じですが、それぞれの国の食文化によって長さや形状が少しずつ異なっています。いつ頃伝わり、どのように変化していったのでしょうか。その歴史を紐解きながら、日用品でありながら、小さな工芸品でもある箸の魅力に迫っていきましょう。

箸とは

箸とは、渡る橋と同じで、向こうとこちら側、つまり食べ物と自分をつなぐ役割を持っています。

「箸」という言葉は、元々は大和言葉(日本古来の固有の言葉)において、物の両端を表す「ハ」と、物を繋ぎ止める、固定するという意味の「シ」が組み合わさりできたと言われています。そのことから、夫婦の間を橋渡しするという意味合いでも、結婚祝いとして贈られることが多い品です。

また、2本1組で「つまむ、はさむ、押さえる、すくう、裂く、のせる、はがす、ほぐす、くるむ、切る、運ぶ、混ぜる」という12通りもの機能を持ち、単なる道具というよりも、体の器官の一部のような役割を果たしてきていると考えられています。そして日本における箸とは、たとえ夫婦や親子でも共用することはない、自分だけの箸を持つのが一般的な、特別な日用品なのです(ちなみにお椀、お茶碗、湯呑なども家族の中で所有者が決まっているものですね)

箸の起源

紀元前300年頃から調理に火を使うようになり、調理の道具、そして熱い食べ物を食べるために、中国で箸が使われ始めたと言われています。

日本における箸の歴史

飛鳥時代(592年〜710年)に、中国・朝鮮半島より「神の器」として箸が伝来します。元々は、竹製の折箸(ピンセット型)で、その後、今と同じ二本の塗り箸へと変化していきます。当初は神様へお供え物をする際に使われており、箸を使えるのは神様と天皇だけと言われていました。

奈良時代(710年〜784年)に入ると、貴族の間でも箸が使われるようになります。竹製の箸が主流ですが、塗装のない木の箸も使われていました。毎日使うようなものは特に記録が残っていないため詳細は不明ですが、庶民が使うようになったのは鎌倉時代(1185年頃〜1333年)ではないかと言われています。

江戸時代(1603年〜1868年)中期には、各藩が地場産業として塗り物を競ったため、塗り箸が発展していきます。現在知られているほとんどの漆器の産地がこの時期に確立し、それと同時に塗り箸も多様化しました。江戸時代末期になると裕福な町人や商人が、自分のステイタスとして塗り箸を使ったということですが、庶民の手にはまだ塗り箸は届いていなかったようです。ちなみに、ウナギ屋さんで使われた箸を削ってお蕎麦屋さんで使用し、お蕎麦屋さんで使用した箸に塗料を塗って一膳飯屋で使用してリサイクルしていたそうです。

明治(1868年〜1912年)〜昭和20年代(1945年〜)は、庶民の箸はまだ竹箸や木地箸が主流でした。

昭和30年代(1955年〜)の高度成長期には塗り箸の伝統的な産地でも、化学塗料の箸が多く生産され、漆に比べて極めて安く、乾燥機を用いて短時間で乾燥できるため市場シェアを拡大していきました。

中国と韓国と日本の箸の違いは?

日本だけではなく、中国や韓国でも使われている箸。同じ箸でも日本のものとはどこが異なるのでしょうか。

中国
日本の箸よりも長く、箸先と箸頭(箸先の反対側の上部)の太さがほぼ同じ。
お箸と一緒にレンゲを使用。

韓国
銀色(金属製)でやや平たい形状。
金属が使われている理由としては、戦争が多い地域だったために持ち運び用としての耐久性が必要だった、素材の銀が毒味を兼ねていた(毒に反応して変色するため)などの説があります。また、金属の重さを軽減するために平たくなっています。
箸と一緒にスプーン(スッカラ)を使用。

日本
箸先が細いのが特徴。繊細な料理に対応するためにこのように発達してきました。また和食では基本的に箸のみを使用します。しかし、お味噌汁など箸だけでは食べられないものがあるために、日本では箸とお椀がセットとなっています。昔、旅に出る時も、荷物の中には箸とお椀を入れていったそうです。ものによって数え方が変化する日本語ですが、箸は「膳」と数えます。2本1組(1人分)で「一膳」です。

また、日本ではお正月には、箸先と箸頭のどちらも同じように細くなっている「祝い箸」という両口箸を使っておせち料理を食べます。
なぜ、いずれの側も箸先のように細くなっているのかというと、片方は自分が、もう片方は神様が使っておせち料理を食べるためです。大皿などから料理を取り分ける際使っていない側の箸頭を使う人もいますが、この祝い箸ではそのように神様の側を使うことはできません。

中国と韓国と日本の箸の違いは? お正月の祝い箸は、箸袋に入れて供されます

箸の使い方

現代では正しくお箸を持てる人は日本人でも3割ぐらいではないかと言われています。つまり数字の上では多くの人がきちんと箸を使えていないことになりますが、それでもおかしな持ち方で食事をしている人は周りに違和感を与えます。お箸がきれいに使えているということは、食べている本人にとっても使いやすく、そして食べやすいということなのです。変な持ち方で癖がつくと、なかなか直すことができません。毎日少しずつの練習でもぜひ身につけて、お刺身、お寿司、天ぷら、ラーメンなど、多彩な日本の食を楽しんでみましょう。

以下の順番で、お箸の使い方を練習してみましょう。

1:まずは自分に合った、使いやすいサイズの箸を選ぶ。
毎日、正しく使うためには、自分にとって使いやすい長さの箸を選ぶことが大切です。写真のように親指と人差指を直角に広げて、その2つの指先を結んだ長さを「一咫(ひとあた)」と言いますが、この長さの1.5倍、つまり「一咫半(ひとあたはん)」が自分に合ったお箸のサイズとなります。

箸の使い方
2:箸を1本だけ使って持ち、動かしてみる。
上の箸1本だけの箸頭から1/3の辺りを親指と人差指ではさみます。ここに中指を添えて、3本の指で持ってみます。これは日本の鉛筆の持ち方と同じです。力を入れずに軽く持ってみましょう。写真のように持てたら、数字の「1」を描くように箸先を縦に動かします。手首は使わずに指だけで動かして、空中に大きな「1」を書いてみてください。

箸の使い方2
3:下の箸も一緒に持ってみる
慣れたら、上の箸を持ったまま、親指付け根と薬指第一関節に下の箸を差し込みます。

箸の使い方3
4:上の箸だけ動かしてみる
下の箸が動かないように左手で支え、上の箸だけ動かして、空中でもう一度、数字の「1」を書いてみます。

箸の使い方4
5:慣れたら支えの手を外して練習をする。
この時に、2本の箸頭の間が開いて、箸先と箸頭の3点で三角形を作れていることがポイントです。

箸の使い方5
6:箸先でカチカチと音が出せるようになれば、もう完璧です。

箸の使い方6
あまり難しく考えすぎずに、そして食事中は上手にできなくても、食事の前に毎日少しでも練習していくと、きれいな箸使いを身につけられるようになりますよ。そして、箸の作法では、上手な使い方とともに、行ってはいけないタブーもあり、「嫌い箸」と呼ばれています。
例えば…

刺し箸:料理に箸を突き刺して食べること。
ねぶり箸:箸についたものを口で舐め取ること。
迷い箸:どの料理にしようかと迷い、料理の上であちこちと箸を動かすこと。
寄せ箸:箸で遠くの食器を手元に引き寄せること。
渡し箸:食事中の食器の上に、箸を載せること(これは「食べ終わった」という合図になります)。
箸渡し:箸と箸を使って、食べ物のやり取りをすること(葬式の際の骨上げ*1を連想させます)。
二人箸:1つの料理の皿に、2人以上が同時に箸をつけること。
拝み箸:食事前に、手のひらを合わせ、両手の親指と人指指の間には箸を挟んで「いただきます」をすること。

*)骨上げ:火葬後に行われる作法のひとつ。火葬を行った後に箸で遺骨を拾い、骨壺に納めること。故人が無事にあの世へ渡れるように橋渡しをするという意味が込められている

実は他にもたくさんあるのです。自分自身も、また、人と一緒に気持ちよく食事をするためにも、マナーには気をつけてみましょう。

箸を買える場所はここ

箸専用の木というものは特になく、いろいろな木を原料とし、素材や塗りによって重さが変わる箸。この重さ(軽さ)も箸選びでは大切な要素です。毎日使う箸は、スーパーや雑貨店など様々なお店で買うことができますが、専門店であれば、各地の伝統的な塗り箸やオリジナルの箸、箸とともに使いたい箸置きやお椀などを取り扱っていることもありますし、気軽に相談もできます。


福井県の老舗メーカーの直営店
■兵左衛門(ひょうざえもん/東京ほか)

福井県小浜市に本社がある、箸の製造・卸・販売のメーカー。口に入る箸は食べ物であるという認識のもと、製造する箸の箸先には100%の天然漆を使用するなど、安全安心にこだわった箸作りを心がけています。全国の百貨店などで取扱いがあるほか、種類豊富な直営店もあります。都内1号店の広尾店は、福井の伝統箸である「若狭塗(わかさぬり)」を主体に、約1,000種類の箸を揃えており、ギフトを求めに訪れる方が多いとか。広尾は観光地ではありませんが、外国人観光客が多く来店するそうです。
国内球団で使用されていた折れたバットから作った話題の「かっとばし」や、スワロフスキーの装飾がきらびやかな箸など、多彩なラインナップが揃っています。外国人観光客には、貝が入っている螺鈿(らでん)の箸や、食洗機に対応できる丈夫な箸先の商品も人気。東京駅グランスタ店、歌舞伎座店(両店とも店名は「にほんぼう」)には、それぞれオリジナルの箸もあります。名入れは、広尾店、東京駅グランスタ店で対応しています。

箸を買える場所はここ 若狭塗の箸は、福井県の若狭湾をモチーフに、卵殻、貝殻、松葉などを用いて模様を施し、漆を何層にも重ねて丹念に磨き上げて完成

箸を買える場所はここ2 1本1本職人の手によって削られた、とても持ちやすい形状のけずり箸。サイズは大・中の2種 各2,808円

箸を買える場所はここ3 結婚祝い用の桐箱に箸と箸置きをセットした、結婚のお祝いにぴったりの箸置き付き夫婦セット5,788円

箸を買える場所はここ4 広尾駅から徒歩1分という立地の「兵左衛門 広尾店」

「兵左衛門 広尾店」
●東京都渋谷区広尾5-3-9
●03-5420-1184
●火曜(祝日と12月は営業)定休
●11:00-20:00(月・水曜〜土曜。日・祝日は〜19時)
●食洗機対応箸 1,944円、螺鈿1,620円〜

名入れは
「簡単名入れ」は一膳15分〜で当日・即日渡し対応。ひらがな、カタカナ。アルファベット(大文字のみ)。
名入れ料は一膳324円。※17時を過ぎると当日渡しができない場合があり。
他に漢字やローマ字(大文字小文字)も選べる「レーザー名入れ」料は一膳1,296円。
自分の手書き文字や絵を入れられる「手書き名入れ」は、名入れ料一膳1,620円。いずれも所要10日〜2週間。

「にほんぼう 東京駅グランスタ店」
●東京都千代田区丸の内1−9−1 東京駅構内B1F グランスタ内(店舗はJR改札の中)
●03-5221-7768
●無休
●9:00-22:00(月〜土曜・祝日。日・連休最終日の祝日は〜21時)
※名入れは「簡単名入れ」が可能。16時まで対応。

「にほんぼう 歌舞伎座店」
●東京都中央区銀座4−12−15 歌舞伎座B2F 木挽町広場
(地下鉄東銀座駅より直結しているので、歌舞伎座に入場しなくても買い物可)
●070−3530−2084
●年末年始休み
●9:30-18:30(芝居上演のない時は〜18時)

箸を買える場所はここ5 名前が入ることで、さらに特別感が出ますね


3,500種類を超える箸がところ狭しと並ぶ
■銀座夏野(東京ほか)

日本人にとって最高の道具である漆器を、多くの人に使ってもらい、楽しんでほしい。その思いから、最も身近な漆器である箸の専門店を1999年、銀座にオープン。目指しているのは日本一のお箸屋さん。オーナーは、時間を見つけては地方に出かけ、自分の目で商品を探し、このお店をオープンしたそうです。特に銀座店には全国各地から集めた3,500種類もの箸や、1,000種類以上の箸置きが並び、目移りするほど。異なる産地をコラボしたオリジナル箸も手がけています。また、最近ではマイ箸を持ち歩くブームが再び訪れているそうで、がま口タイプのオリジナルの箸入れも人気だとか。都内を中心に6店舗。銀座本店には値段が高めの商品や小物、器が揃い、東京スカイツリーソラマチ店では店舗限定のスカイツリー箸を購入できます。

箸を買える場所はここ6 銀座本店。ぎっしりと置かれた箸や小物たち。かさばらない、手頃な値段、必ず使うもの、食卓が箸ひとつで楽しくなる。このような理由から、プレゼントとしてお箸を選ぶ人が増えているそうです

箸を買える場所はここ7 左の2膳は、大きく螺鈿を施し華美ではないがエレガントな黒蜜・赤蜜 各1万2,960円。右の2膳は上下を半分に塗り分けることで麺などが滑りにくく、値段も控えめな人気の若狭塗り市松カジュアル 大・中 各4,860円

箸を買える場所はここ8 京都の表具屋さんに作ってもらったというがま口型箸入れ 3,780円

「銀座夏野」
本店
●東京都中央区銀座6−7−4 タカハシビル1F
●03−3569−0952
●無休
●10:00-20:00(日・祝日と連休最終日の祝日のみ〜19時)
※名入れは、18時30分までの受付で当日渡し可能。漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字(大文字・小文字)。
名入れ料は一膳432円。

東京スカイツリータウンソラマチ店
●03−5610−3184
●無休
●10:00-21:00(年末年始は施設に準じる)
※名入れは、17時30分までの受付で当日渡し可能。漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字(大文字・小文字)。


2つの産地をコラボしたオリジナル箸が揃う
■箸や楓(はしやかえで/京都)

京都・高台寺の傍らに佇む、夫婦で経営する小さな箸店。「箸は毎日同じものを使いますが、例えば晴れ着と普段着のように、ハレの日には「ハレ箸」でご馳走を召し上がって、より楽しく豊かな気持ちで過ごしていただきたい」との思いから、販売しているのはどれも上品さの中に遊び心が感じられる作り。そしてすべてがこの店のオリジナル。

お箸本体は輪島の塗り箸。この上に、京都の蒔絵職人が「伝統的」、「和風モダン」、「物語がある」という、おもに3つのテーマに沿って絵柄を描いていき、輪島と京都という、異なる産地がコラボ。箸は2本であるという特性を活かしたデザインは、眺めているだけでも楽しくなります。

箸を買える場所はここ9 八坂の塔とくくり猿がモチーフ。3,800円

箸を買える場所はここ10 狐のお面(白)がユニーク1,700円

箸を買える場所はここ11 テーマは京の夜と朝 2,100円

箸を買える場所はここ12 石畳に人力車が通る風情が似合う小径にある店舗

「箸や楓」
●京都府京都市東山区金園町408
●080−2471−7250
●不定休
●11:00-17:00
※名入れは、漆で書くために通常2週間〜遅くとも1ヶ月以内でお渡し(当日渡しは不可)。
名入れ料は一膳、基本500円。


※料金は全店とも税込み価格を表記しています。

箸のまとめ

日本では1400年ほどの歴史がある箸。一度使うと、なかなか取り替えることのない箸は、長く使い続けるので普段はあまり深く考えない存在ですが、実はその時代の世相を表して変化していたのですね。今では、伝統的な塗り箸や自然な風合いの木の箸の他に、様々な素材から生まれた箸などもあり、選ぶ際には、迷うのも楽しいものです。自分だけの特別な漆器として、また、お土産やギフトとして、楽しみながら選んでください。
(歴史年表、箸の使い方撮影ほか取材協力:兵左衛門 広尾店)

※2018年8月5日現在の情報です。詳細は直接お問い合わせの上おでかけ下さい。

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