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お好み焼き

2018.08.09

お好み焼き
日本の「粉モノ文化」の中心にある「お好み焼き」。各地で様々な形に進化を続けている国民的ご当地グルメは、なぜこれほどまでに愛されているのでしょうか?そのルーツを紐解きながら、意外と知られていない「お好み焼き」のあれこれを探っていきましょう。

お好み焼きとは何?

お好み焼きの歴史を辿ると1500年代まで遡ると言われていますが、そもそもお好み焼きの定義とはどういうものなのでしょうか?

お好み焼きとは何?
様々な書物において、お好み焼きを定義する内容が散見されますが、それらを総括すると、①水に溶いた小麦粉を生地にする②野菜、肉、魚介類など好みの材料を使って鉄板の上で焼き上げる③ソース、マヨネーズ、かつおぶし、青のりなどの調味料をつけて食べる、という三大要素で構成されているものを、広義として「お好み焼き」と呼んでいます。


この「お好み焼き」のルーツは、16世紀の安土桃山時代の著名な茶人・千利休が好んで食べていたという「麩の焼き」だと言われています。千利休が催した利休百会記という茶会の席で「麩の焼き」が茶菓子として提供されていたという記録が残っています。水で溶いた小麦粉を、煎り鍋に伸ばして薄く焼き上げ、山椒の入った味噌を挟み込んだクレープのようなお菓子が、「麩の焼き」だったと伝えられています。

お好み焼きとは何?2
この「麩の焼き」以降、19世紀、江戸時代末期には水で溶いた小麦粉を鉄板などに流し込んで焼くという食べ方が一般的となり、庶民の間にも広まったのが今の「お好み焼き」の原点。これが1930年代に全国各地で様々なスタイルへと進化を遂げていきます。

お好み焼きの種類

お好み焼きの種類
20世紀初頭、「麩の焼き」は、発祥の地である近畿地方で「洋食焼き」や「一銭洋食」などに進化しました。一枚一銭で売られていたのがネーミングの由来ですが、こうした古いスタイルのお好み焼きの原型は、現在も岸和田市の「かしみん焼き」や高砂市の「にくてん」、そのほかにも「ねぎ焼き」「キャベツ焼き」といった形で残存しています。


同じ頃、東京では「どんどん焼き」が生み出され、これが関東および東北地方で広がりました。現在もお祭りの屋台店などで見ることができる「どんどん焼き」は、1920年代には東日本全域に知れ渡り、いつしか具材が加えられるようになります。

お好み焼きの種類2
このように、水で溶いた小麦粉を薄く焼いただけの食べ物は、1930年代には具材が加わり、呼称も「お好み焼き」へと変わっていきます。「お好み焼き」と呼ばれるようになったのは、その当時男女が密会をする場所として「お好み焼き屋」が使われ、店員が男女の会話に関わらないためにお客さん自らが “好み”で勝手に焼くスタイルに変わったことが起源だと伝えられています。

お好み焼きの種類3
「お好み焼き」の歴史の中で、生地に具材が加わってくるタイミングで、“のせ焼き”と“混ぜ焼き”が生み出されました。生地の上に具材をのせる"のせ焼き"は東京の「お好み焼き」や、神戸の「にくてん」などが1910年代には商品化されており、その後に具材を最初に混ぜる“混ぜ焼き”が普及しました。1920年代までに“混ぜ焼き”が大阪へ伝播して、戦後にはキャベツを混ぜ込んで焼く現在の関西風「お好み焼き」のスタイルが確立されていきます。同じ頃に広島では、薄い生地の間に具材を挟み込んで焼く広島風「お好み焼き」のスタイルが一般化しますが、戦前から戦後に渡って広島では東京や大阪の影響を受けず、独自の「お好み焼き」を生み育ててきました。広島市内に今もある『お好み村』は、当時の中央通りの屋台街から始まっており、一銭焼きのお店が軒を連ねていた屋台街の誕生当時から営業しているお店がいまだ残っているのも興味深いところです。

お好み焼きの種類4
戦後「お好み焼き」は、お客さん自身が好みで焼いて食べるものから、キャベツやネギなどの具を加えた「粉モノ料理」そのものを指す言葉へと変わっていきます。全国各地では「どんどん焼き」や「洋食焼き」が「お好み焼き」という呼称に統一され、主に近畿地方の食文化に深く浸透していきました。

お好み焼きの種類5
お好み焼きソースが開発され、鉄板埋め込み式のカウンターテーブルが登場するなど、大阪が「お好み焼き」の本場として認識されるのは、1960年代後半から。様々な具材の追加(今でいうトッピング)が発案され、さらにマヨネーズをかけたり、生地に山芋を混ぜてフンワリさせるなど、独自の進化も見られました。そして、大阪万博を機に注目を集めるとともに観光客が急増したことで、「お好み焼き」は瞬く間に大阪名物になりました。有名店の台頭、店の調理人が目の前で焼いて提供するというスタイルが定着したことで、料理としての付加価値が高まったのも、ちょうどこの頃でした。


このように、地域毎に特徴を備えて進化してきた「お好み焼き」。続いては、現在の日本各地のお好み焼きの特徴を紹介しましょう。

お好み焼きの種類6

・関西風「お好み焼き」の特徴

お好み焼きの種類7
小麦粉を出汁で溶き山芋や卵を合わせた生地に、細かく刻んだキャベツを混ぜ込んで焼き上げる“混ぜ焼き”が主流。そして、関東のように肉などの具材は生地には混ぜず、メインの具材を上にのせて焼く“のせ焼き”が関西風の特徴です。ソースは数種類のお好み焼きソースをお店独自でブレンドしたり、オリジナルのお好み焼きソースを開発しています。

お好み焼きの種類8
また、マヨネーズを最初に採り入れたのは大阪市の老舗店『ぼてじゅう』で、1953年から採用しています。その後1950年代後半には大阪のほとんどのお店でマヨネーズがかけられるようになり、全国に普及していきました。


・広島風「お好み焼き」の特徴

お好み焼きの種類9
小麦粉を水で溶いたものを薄く伸ばし焼いた生地に、野菜や肉などの具材を重ねてひっくり返し、生地や卵で蓋をして蒸し焼きにするのが広島風の特徴。関西風との決定的な違いは、モヤシと中華麺が定番の具として入ること。昔から今まで一貫して、生地と具を混ぜ込まない“重ね焼き”である広島風お好み焼きは、東京と大阪のお好み焼きから影響を受けず、独自の進化を続けてきたオリジナリティの高いスタイルなのです。

お好み焼きの種類10
また、広島県内でも地域毎でバリエーションに富んでおり、三原市内ではモツ(鶏のレバー)が具に入ったり、府中市では豚バラ肉ではなくミンチ肉が一般的であったり、尾道市では砂ズリが入ったり、竹原市では生地に酒粕を混ぜ込んだり、エッジのきいた「お好み焼き」が各所で楽しめます。


・関東風お好み焼きの特徴

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東京をはじめとした関東地区では、お好み焼き自体のオリジナリティは薄いものの、昔からの名残で“混ぜ焼き”の場合はお客自身が焼いて食べるスタイルが主流です。生地と具が入ったお椀や金属製カップで一人前ずつ提供され、全て完全に混ぜ込んで焼くのが関東風。

お好み焼きの種類12
お店によっては、江戸前ならではの小柱やアサリといった具を入れたり、キャベツではなく白ネギを入れたり、もんじゃ焼きとお好み焼きを両方メニューに揃えているお店では、あんこ巻きやアンズ焼きなど甘味系が選べるのも関東風の特徴です。


・東海地方のお好み焼きの特徴

お好み焼きの種類13
浜松市を中心とした遠州地区では、たくあんや漬物、紅しょうが、ネギなどを刻んで生地に混ぜ込む「遠州焼き」があります。また静岡県の富士宮市ではご当地グルメで有名になった富士宮焼そばをのせた「しぐれ焼き」と呼ばれるお好み焼きも存在します。


・四国地方のお好み焼きの特徴

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徳島県のお好み焼きはユニークで、フィッシュカツやエビの天ぷら、甘く煮た金時豆やミカン、ヨーグルトなど、オリジナリティ抜群の具材が楽しめます。また、香川県では対岸の神戸から伝播したと思われる「にくてん」がご当地グルメのひとつとされています。


・九州地方のお好み焼きの特徴

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北九州市では、ケチャップとマヨネーズを混ぜたオーロラソースをかけるのが定番。そして、熊本・荒尾市では、鉄板いっぱいに広げて焼き上げる巨大なお好み焼き「ダゴ」が有名です。ダゴとは、熊本の郷土料理であるダゴ汁に由来しているらしく、小麦粉の配合が多い生地のボリューム感が学生の人気となり、1963年から今まで続く老舗店も存在しています。


・沖縄地方のお好み焼きの特徴

お好み焼きの種類16
沖縄では、具にキャベツを使わずニラやネギを入れた「ヒラヤーチー(平焼き)」という一銭洋食に近いものや、「ポーポー」という薄焼き生地に味噌や黒糖を巻いた「麩の焼き」にそっくりの料理が存在します。これは進化を止めた、まさにお好み焼きの先祖なのかもしれません。

「お好み焼き」のカロリーと栄養素は?

「お好み焼き」のカロリーと栄養素は?
「お好み焼き」の実際のカロリーと栄養素はどうでしょうか?トッピングによって様々な種類がある「お好み焼き」ですが、オーソドックスな「お好み焼き」のカロリーは、一般的に1枚(300g前後)あたり「約600kcal」と言われています。100gあたりですと「200kcal」になります。他の食べ物と比べると、ご飯1杯が約170kcal、食パンが約260kcal、フライドポテトが388kcal、カップラーメンが約480kcal、といったところです。

レシピによっては「お好み焼き」1枚で10品目以上の食材が使われることもあり、中にはたんぱく質、カルシウム、鉄分、ビタミンA、B1、B2、Cの栄養素を摂取できるものもあります。特に、小麦粉、キャベツ、山芋といった主要な食材には食物繊維が多く含まれており、適度なカロリーで栄養もしっかり摂れるバランス食だと言えるでしょう。

お好み焼きの作り方・焼き方

お好み焼きの作り方・焼き方
家庭でもホットプレートやフライパンで作ることのできる「お好み焼き」ですが、実は作り方・焼き方も様々。関西風、関東風、広島風という代表的な3種類の「お好み焼き」を家庭で楽しむレシピを簡単にご紹介しましょう。


・関西風「お好み焼き」の作り方・焼き方

お好み焼きの作り方・焼き方2
関西風の特徴は生地を出汁で溶き山芋と卵を加えること。そして生地にみじん切りしたキャベツを混ぜ込み、ホットプレートやフライパンに生地を流し入れます。上から豚バラ肉など好みの具材をのせて、ゆっくり焼きます。モダン焼きにしたい場合は、生地を半分だけ流し入れてから、焼きそば(蒸しそばでも良い)をのせて、さらに上から残りの生地を流し入れて焼きます。焼き上がったら、お好み焼きソース、マヨネーズ、お好みでカツオ節や青のり、からし、一味などをかけていただきましょう。


・広島風「お好み焼き」の作り方・焼き方

広島風を家庭で作るなら、鉄板はホットプレートが最適です。まず水で小麦粉を溶いたゆるめの生地を鉄板に流し入れて、円状に薄く伸ばします。その上に魚粉、キャベツ(みじん切りより細い千切りが好ましい)、モヤシ、天かすなどを山盛りにして、その上から生地を少し流しかけます。軽く炒めた中華麺をのせ、ゆっくり焼いている間に、空いたスペースに卵を割り入れます。そして片面に火が通ったお好み焼きを、卵の上にひっくり返して生地ごと上からコテで押さえてあげましょう。キャベツを蒸し焼きするイメージなので、中身から滲み出る水分で飛び散った生地もまとめ上げることができます。そしてキャベツがしんなりしたら、もう一度ひっくり返して、卵の面にソース等を塗って完成です。

お好み焼きの作り方・焼き方3

・関東風「お好み焼き」の作り方・焼き方

お好み焼きの作り方・焼き方4
関東風の特徴は、生地と具をしっかり混ぜ合わせて焼く“混ぜ焼き”にすること。お椀などに生地とキャベツと具材を入れて、スプーンで空気を入れながらサックリと混ぜましょう。あとはホットプレートやフライパンに流し入れるだけ。上からかけるソースやマヨネーズはお好みで。家庭によっては醤油を使うところもあるようですね。

お好み焼きのソースの秘密

お好み焼きのソースの秘密
お店毎の特徴が出やすい“お好み焼きソース”の定義は様々ですが、主には野菜と果物にスパイスをブレンドしたウスターソースの一種とされています。ウスターソースの中でも、粘度が0.2パスカル秒(pa・s)未満のものがウスターソース、粘度が0.2 pa・s以上1.5 pa・s以下が中濃ソース、そして粘度が1.5 pa・s以上のものを濃厚ソースと分類されています。(くき※日本農林規格による定義)

お好み焼きのソースの秘密2
そして、お好み焼きソースは中濃から濃厚ソースの類いに分類されます。酸味と塩味を抑えつつ、甘みを強く、また粘度が高めなのも特徴になります。ちなみに焼きそばソースは、ウスターから中濃に属するタイプで、酸味と塩味はウスターと同等、粘度は中濃ソースと同等になり、醤油やカツオエキス等の各種調味料を使用しているのも特徴です。

近畿地方では、地域ごとに“地ソース”が多数存在し、お好み焼き専門店のオリジナルソースもスーパーなどで購入できます。また、広島ではオタフクソースをはじめとした単一メーカーのお好み焼きソースが主流で、店先の暖簾やノボリに使っているソースの会社名が記載されていることも多いので、好みのお店の味を家庭で真似したい時の参考にもなるかもしれませんね。

お好み焼きのソースの秘密3

日本でお好み焼き食べるならここ!JOURNEY of JAPANが勧める名店

最後に、日本を代表するお好み焼きの老舗名店をご紹介しましょう。

まずは、東京の元祖「浅草 染太郎」。1937年から続き、お好み焼き発祥の店とされています。過去に各界の著名人に愛されたお店、それが浅草染太郎の歴史でもあるのです。

このお店でまず食べておきたいのが「お染焼き」でしょう。具には合い挽き肉、イカゲソ、桜エビ、そして焼きそばと卵が乗っています。

もうひとつの必食は「しゅうまい天」。お餅で土手を作り、その中に豚挽肉とニンニク、タマネギを混ぜ込んだ生地を流し入れて焼きます。醤油をちょっと垂らして食べると芳ばしさが一層際立って、クセになるおいしさです。

「風流お好み焼 染太郎」
●東京都台東区西浅草2-2-2
●12:00-22:30
●不定休


続いては大阪で一番の老舗店「千日前はつせ」です。

日本でお好み焼き食べるならここ!JOURNEY of JAPANが勧める名店
このお店は戦後間もない1945年創業で、元々旅館だった広い店内には昔ながらの自分で焼くスタイルの鉄板席が設けられています。

日本でお好み焼き食べるならここ!JOURNEY of JAPANが勧める名店2
3種の粉をブレンドした独自配合の生地は、和風だしと中華スープで溶いたオンリーワンな味。外はカリッ、中身はふんわりの絶妙なお好み焼きを、2種類のオリジナルソースで楽しめます。

「大阪の味 お好み焼 千日前はつせ」
●大阪市中央区難波千日前11-25はつせビル2F
●11:30-24:00(LO23:30)※土日祝は11:00から
●無休
http://www.hatsuse.net/


そして広島の名店は、1950年創業の「みっちゃん」。後に『お好み村』となる屋台街から続く広島風お好み焼きの元祖とされています。

日本でお好み焼き食べるならここ!JOURNEY of JAPANが勧める名店3
キャベツの甘みとカリッと芳ばしい中華麺、そこに“みっちゃん特製ソース”が相まって、ここにしかない味と出逢えます。

日本でお好み焼き食べるならここ!JOURNEY of JAPANが勧める名店4
「お好み焼 みっちゃん総本店 八丁堀本店」
●広島県広島市中区八丁堀6-7チュリス八丁堀1F
●11:00-14:30、17:30-21:30 ※土日祝は11:00-15:00、17:00-21:30
●無休
http://www.okonomi.co.jp/hatchobori.html

お好み焼きのまとめ

いかがでしたか?深掘りすればディープ過ぎる「お好み焼き」の世界。日本を旅するうちに、自分好みの「お好み焼き」が見つかるはずです。各地の「お好み焼き」を食べ歩いて、ご当地の食事情を探ってみるのも楽しいかもしれませんね。

※2018年6月7日現在の情報です。詳細は直接お問い合わせの上おでかけ下さい。

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